第1話 木星の監獄――イオ脱出
【ナレーション】
木星の衛星〈イオ〉。
そこは、宇宙でも最も危険な犯罪者たちが収容される監獄だった。
(効果音:低く唸る宇宙の音、鉄の扉が閉まる)
【ナレーション】
この星には、凶悪犯から軽犯罪者まで、約100万人が収容されている。
警備はすべてAIロボットによって行われ、脱出は――不可能とされていた。
【場面:イオ監獄・監視室】
AI警備主任「異常はないか?」
AI部下「ハッ。異常ありません。」
【ナレーション】
昼食を終えた囚人たちは、2時間の自由時間を与えられていた。
囚人たちはグループに分かれ、地球の刑務所と同じように“ボス”がいた。
【場面:中庭の囚人グループ】
テヘラ(ひそひそ)「ゾナ……お前をこの星から逃がすために、俺はわざとこの監獄に来たんだ。」
ゾナ(警戒しながら)「……ありがたいが、本当に脱出できるのか?」
テヘラ(ニヤリと)「できるさ。必ずな……フフフ。」
(効果音:ブザー音)
AI看守「自由時間終了。全員、持ち場に戻れ。」
【ナレーション】
ざわめく囚人たちの中――テヘラが動いた。
テヘラ「今だ、ゾナ! 俺に掴まれ!」
ゾナ「……わかった!」
(効果音:ブゥン/空間転移音)
【ナレーション】
二人の姿が、群れの中から――忽然と、消えた。
【場面:監視センター】
AI部下「管守長、大変です! 囚人番号29686と87669が……消失しました!」
管守長「何だと!? 馬鹿な! イオから脱出などあり得ん!」
(効果音:モニター再生/ザラついた画面)
AI「映像を再生します……」
【ナレーション】
そこには、ゾナとテヘラが光のゆがみに飲まれるように姿を消す様子が映し出されていた。
管守長「タイムトンネル……。まさか、あれを使ったのか……!」
【注釈】
※タイムトンネル:時空を超える特殊な通路。
移動先の時代・場所はコントロールが難しく、追跡も困難。
管守長「AIニビル、奴らの現在地を予測しろ。」
AIニビル「おそらく、銀河第三惑星――地球です。」
管守長「地球か……未熟な惑星だな。環境破壊、人種差別、宗教戦争……囚人が潜伏するにはうってつけだ。」
管守長「特別捜査官リンバとゴンズを呼べ!」
【場面:捜査官控室】
リンバ「今回の任務は難しそうだな。」
ゴンズ「だが、必ず連れ戻す。」
管守長「ひとりはタイムトンネルを操る能力を持つ。もうひとりは窃盗犯だ。理由はわからんが、連携して脱出した。必ず追え。」
(効果音:宇宙船スペースタイム発進)
【場面:地球・トウモロコシ畑/昼】
(効果音:ブゥン/空間転移音)
ゾナ「……成功したか?」
テヘラ「完璧さ。ここが地球だ。」
ゾナ「……なんて臭い星だ。」
テヘラ「イオよりマシだろ。じゃあな、俺は用がある。」
(効果音:ブゥン/テヘラ再び転移)
【ナレーション】
ゾナはひとり残され、町の方角へと歩き出した――。
【場面:地球の街・道路/昼】
(効果音:車の走行音)
ゾナ「なんだこれは……!? 地面を走る乗り物? 1000年前の遺物じゃないか?」
(ゾナ、銀行の看板を見る)
ゾナ「……金。まだこんなもの使ってるのか。フフフ……」
【場面:夜・銀行前】
(効果音:虫の音/静かな夜)
ゾナ「歴史書に書いてあったな。金は“価値”と交換できる道具……」
(ゾナが壁に手をかざすと、スーッと壁にめり込む)
【ナレーション】
念力によって警報は無効化され、ゾナは金庫の中へと侵入した。
ゾナ「ワハハハ! 金が山のようにあるじゃないか!」
(札束を詰めて帰ろうとするが……)
(効果音:ビーッ!非常ベルが鳴る)
【ナレーション】
ポケットから落ちた1枚の紙幣が、金庫の扉に挟まり――警報が作動した。
【場面:銀行前/パトカー到着】
笠寺刑事部長「何が起きた? 防犯カメラを確認しろ!」
警官「カメラ映像が乱れていて……ですが、人影が壁をすり抜けているような……」
科学捜査官「……部長! これを見てください。扉に、紙幣が半分……埋まっています!」
笠寺「あり得ん……こんなことが……!」
【場面:クラブ・ゾナ豪遊中】
ゾナ「地球ってのは、案外いい星じゃないか! ワハハハ!」
【ナレーション】
だが、その背後に――追跡者たちの影が忍び寄っていた。
【次回予告】
特別捜査官リンバとゴンズ、ついに地球に降り立つ。
ゾナの潜伏先を突き止められるのか――?
次回〈第2話:追跡者たち〉